【保険代理店ミートアップレポート】「入社後、3カ月が勝負!」社員の定着率を高める具体的な2つの仕組みを紹介

「入社後、3カ月が勝負!」社員の定着率を高める具体的な2つの仕組みを紹介 セミナーレポート

こんにちは、保険代理店向けに顧客管理システムを開発している株式会社hokanのメディア運営チームです。

7月22日、hokanをご利用いただいている保険代理店の皆様をお招きし、抱えている様々な課題について情報共有を行うmeetupイベントを実施しました。この記事では、hokanで全人事領域に携わる岡島が行った、「新入社員の定着」についての講演の様子をレポートします。

<スピーカープロフィール>

岡島 京右
パーソルキャリア株式会社にて、エンタープライズ企業への総合企画提案を担う新設事業部の立上げを行い、中途採用・人事制度・教育までの総合コンサルティングに従事。その後、クックパッドからMBOした、設立4期目のSaaS企業に株式会社ロコガイドに2人目の人事として入社。IPO前後の組織拡大に向けた中途採用戦略の立案と仕組化から実行までを単独で担当し、2年で約60名の採用を推進。現在株式会社hokanの人事統括として、人事戦略の立案から人事制度の設計と運用、オンボーディングの仕組みづくり、ハイレイヤーの採用など幅広く推進している。

はじめに:保険代理店の皆様にお聞きした「人」に関する課題

岡島:
hokanという会社は、自分の職種に限らず、全員がお客様を向いているチームでありたいと思っています。私自身も人事ではありますが、弊社のカスタマーサクセスを担当している人間と共に代理店の皆様のところを回り、様々なお話を聞かせていただきました。

保険代理店の皆様が抱える課題にはシステムや業務フローに関わるものも多いのですが、共通して抱えているのが、やはり「人」の問題だと思います。代表的なものをいくつか挙げさせていただくと以下のスライドのようになります。

こうした課題に対して、皆様がどのように対応していったのか、という情報・ナレッジ共有のハブにhokanがなれればと考えております。そして、そうした取り組みの一つとして、本日は弊社の入社後支援の取り組みを紹介させていただきます。

社員の定着率を向上させる「守り」の仕組み事例

保険代理店の社員定着に向けた取り組みの一例

今日紹介させていただくのは、社員の定着に向けた「まもり」の部分の事例です。

私は「定着は、入社3ヶ月が勝負だと考えています。これは、その期間の従業員体験、いわゆるEX(Employee Experience)が、新たに採用した社員の方の中に残り続けるからです。そのため、hokan では3カ月間のオンボーディング(入社後の立ち上がり支援)期間を設けています。

例えば、入社前にABCという3つを期待していたとしましょう。それが入社後に、Aについては認識のズレがあり、Cについては期待通りではなかったというようなことが起きると退職に繋がりやすくなります。

そのため、潜在的な部分を含めて、転職によって何を実現したかったのかを把握することが重要になります。例えば、面接時には「成果を出して年収を上げたい」と言っていたとしても、潜在的には「短期的な成果だけではなく、もっと行動面も評価して欲しかった」などと考えているケースもあります。

そうした新規採用者の考えを、「内面の深い部分まで」「できるだけ早期に」把握したうえで、計画的に対応していくことが必要なのです。入社前から入社当日までの間に、新規採用者の希望や潜在的な思いをすくいあげるために弊社では2つの取り組みを実施しています。

① 採用面接時に実施:転職意向ヒアリング

一つ目が、転職意向ヒアリング。弊社では採用面接の過程で「今回のキャリアにおける転職の軸(現職への不満や、次の職場に求めるもの)と、その軸の優先順位を記録しています。

そして、その情報を縦軸におき、横軸に採用上バッティングする企業をおいて整理します。応募者が実現したいことが、弊社と競合それぞれでどの程度実現可能か、ということを意識した上で面接を進めているのです。

例えば、募集人様の採用の場合は、以下のような潜在的な思いにまで踏み込んで聞くと良いのではと思います。

【例】募集人採用で深堀りたい潜在的な思い
  • 売り上げも大事だけれど、それだけじゃなくて生活者のために中長期的な提案ができるようになりたい
  • 個人商店的な会社にいたのでコミュニケーションが活発なところで働きたい

では、具体的にどのように質問しているかというと、以下のようなイメージです。

こうした質問を投げかけることで、応募者の本音や潜在的な思いを聞くようにしているのです。

② 入社直後に実施:社員の「本音を引き出す」、接点を増やす取り組み

社員の「本音」を引き出す「何が起きたら退職するか」を明確にするEX面談

続いて、入社以降の取り組みとして、初日にEX(Employee Experience)面談というものを行っていまして、そこでは「Why」「Will」「What」という「3つのW」という軸で話すようにしています。

この中でも特に3番目の「What」については、「潜在的に何を次の環境で求めているのか」といったことを聞きたいわけですが、なかなか出てこないことが多いです。そのため、入社初日に、いきなり「どういう状況になれば他で退職を考え始めますかと聞くことで、引き出すようにしています。

これは「こうなったら辞める・嫌だ・働きづらくなる」というポイントを一番素直に答えてもらえる質問であるため、これを入社初日に引き出すことで、コミュニケーションのポイントを理解しやすくなります。

そして、この情報は社員ごとに管理するようにしています。「一人一人の社員が退職を考える大きなトリガーは何なのか」を、入社初日のタイミングで会社として把握することで、中長期的にその人に寄り添ったコミュニケーションを取っていくことができます。

経営陣キックオフの実施

また、2日目以降は、社内の様々なメンバーとどれだけ接点を持てるかという点が重要になるため、「経営陣キックオフ」と「メンターランチ」という2つの仕組みを用意しています。

「経営陣キックオフ」は、弊社3人の経営陣が、新入社員に対して、オフィスで直接「これから一緒にやっていきましょう」という思いを直接伝える場です。

繰り返しになりますが、最初の印象・体験は永遠に残るので、そこに対してまず「来てくれてありがとう」という時間を30分でも設けることがとても重要だと考えています。経営陣は忙しいので、どうしても廊下などですれ違いざまに「今日からよろしくね」と声をかけるだけで終わってしまいがちです。

しかし、弊社では必ず会議室を利用して丁寧に行うように徹底しています。また、その際に会社の歴史やビジョンを共有させてもらい、現在や今後の不安についても徹底的に聞くようにしています。

メンターランチの実施

その後2日目以降に、「メンターランチ」を用意しています。新入社員は、入社後はどうしても心理的な緊張が発生します。上司・部下の関係性の中でなかなか本音や中長期的な不安を出せるケースは少なく、一人で抱え込む傾向があります。

メンターの目的は、そのような中でもリラックスして話せる「一番のパートナー・相談役」であり、日々の困り毎や不安、時にはシステムの使い方などの細かいところも含めて、いつでも気軽に聞くことができる相手として寄り添っていくことです。

メンターがやっていることは非常にシンプルです。まずは、初日に軽く話した後でメンターが仲の良い人たちを誘い4人程度でウェルカムランチをします。その後は、1on1やミーティングで定期的にフォローするという形をとっています。

社員の「感情の変化の波」に合わせた施策で定着率を高める

その後、入社1ヶ月〜3ヶ月までは、人事・経営陣・メンターが継続的に面談や1on1でコミュニケーションを取っていく体制を取っています。

一方で、これは少し硬い話になるのですが、ダニングクルーガー効果という、人が新しいチャレンジする際の感情曲線を示したものがあります。この曲線では、最初は少し勉強しただけでも極端に自信が大きくなります。

しかし、その後、その自信が過大であったことに気づき絶望するものの、それをまた乗り越えて本来の知識を身に着けて成熟していくという流れになっています。

こうした一連の動きが入社1~3カ月目で起こるため、これに合わせて面談の目的やコミュニケーションの方向性を変えていくことが重要になってきます。

例えば1ヶ月目の自信が完全に喪失したタイミングでは、経営陣とのQ&Aランチというものを設定して、困りごとや悩みごとを引き出したうえで、自信をつけてもらうための声掛けを行っています。

そして、2ヶ月目の自信回復の途上となるタイミングで「課題発散ランチ」という形で、「より良くするためにどうしたらよいのか」ということを引き出し、自信の上昇効果を高めてあげるようにします。

3か月目ともなれば、かなり成熟している段階なので、改めて未来の話や入社してくれたことに対する感謝の気持ちを伝える場として、少し良いお店を予約して「100日飲み」というものを行っています。

社員について経営陣と人事が本気で考え続け、その場を持つことが重要

以上、入社3ヶ月間の取り組みをざっと説明させていただきましたが、最後にお伝えしたいこととしましては、「結局は施策を入れることよりも、経営陣や人事が、自社の社員のことを本気で考え、話し合い続けること」が何より重要だと思っています。

そのため、面談・1on1・サーベイツールなどの定性的な情報を参考にしながら、「この人は今〇〇に困っている」「のびのびと働ける環境づくりには何が必要か」ということを月に1回は経営陣・人事で話すようにしています。

これまでのお話してきた弊社の社員定着のための取り組みについてまとめると以下のようになります。

最後の人について話す場をしっかりつくる」ということを、かなり意識してやっています。様々な業務で忙しい中では、人事もこうした時間や工数を確保できないということもあると思います。

ただ、人事という部署じゃなくとも、こうした問題に感度の高い社員さんというのは、どの会社にも一人はいらっしゃると思います。そうした方と連携しながら、少しでも多く「人のことを考える場や時間」をつくっていける体制を作っていくことが重要だと考えています。