日本の保険業界の未来?AIを活用した保険会社の台頭が及ぼす影響

保険業界の今後

こんにちは、保険代理店向けに顧客管理システムを開発している株式会社hokanのメディア運営チームです。

今回、株式会社hokanの代表取締役である尾花のコラムをお届けします。

米国における、AIを活用したオンライン保険会社の台頭

米国では2020年にAIを活用したオンライン保険会社が相次いで上場しました。

2020年7月には火災保険のLemonadeが上場しました。Lemonadeはアプリ上でAIのアシスタントとチャットでやりとりするだけで保険に加入できる保険会社です。保険金請求もチャットで行うことができます。

2020年10月にはRootというアプリで自動車保険を販売する会社も上場しました。アプリをインストールして数日間スマホを持って運転すると、運転状況をモニタリングして最適な保険料が提示されるそうです。

両社の保険種目は異なれど、ビジネスモデルは近しいです。Lemonadeは住所情報から不動産データを、Rootはスマホのセンサーから取得される運転状況のデータを参照して最適な保険料を算出しています。データが集まれば集まるほど、保険料算出の精度は高くなり、引受可否の精度も増します。事業が拡大するほどデータが集められて最適化が進む仕組みです。

Lemonade・Rootの二社ともデータによる保険料の最適化や引受可否の精度向上が進んだことで、損害率が年々低下していることを公表しています。このモデルが成功し普及していくと、人の経験や勘の判断が太刀打ちできなくなる可能性があります。

オンライン保険会社がいつ日本にやってきてもおかしくない

日本の保険会社はこういったオンライン保険会社との提携を進めています。

Lemonadeには元々ソフトバンクが出資していました。また東京海上がLemonadeとの戦略提携として、Lemonadeの再保険プログラムに参画し、Lemonadeが有する技術の東京海上グループ内での活用を進めていくことを公表しました。

三井住友海上は同様にHippoという住宅・家財保険を扱うオンライン保険会社との戦略提携を発表しました。合わせて約366億円もの資本出資を実施しています。

このように日本の損保各社は海外のオンライン保険会社の技術を取り込む動きを着実に進めています。オンライン保険会社はいつ日本に入ってきてもおかしくないでしょう。

私見ですが、顧客に応じて保険料を最適化すると、保険料が上がる人も下がる人も出てくるでしょうが、保険料が上がる人は保険をやめたり他社に乗り換えたりする可能性が高いです。従って全体としての保険料は下がってしまう可能性があります。人口が減少する日本マーケットで、自ら進んでマーケットを小さくする可能性がある取り組みは進めづらいでしょう。

また、他業界に目を転じてみると、通信業界では総務省の携帯電話回線の値下げ圧力を受けて、ドコモが携帯電話各社の中で最速で値下げプランを発表しました。このように情勢を見ながら、他社に先んじるためにオンライン保険会社に取り組んでくる可能性はあります。

AIとの戦いの前に、保険代理店同士の陣取り合戦も激しくなる

いつ来るとも分からないオンライン保険会社は脅威ですが、人口の減少に伴う市場の縮小も見過ごせません。

2019年の出生数は86万人となりました。ベビーブームのときの出生数が260万人ほどでしたので今はその3分の1になってしまったということです。

一方、高齢化が進んだこともあり死亡数は増加しています。人口の予測を見ると、この先30年ほどで人口全体で約20%の減少、生産人口は約30%減少することが分かっています。マーケットが7割8割ほどに減るということです。

また地域ごとの転入出で見ると、三大都市圏は転入が増え続け、地方圏は転出が増え続けると予測されています。地域によっては日本全体の人口減少速度よりももっと早く人口の減少、マーケットの縮小が進むことが考えられます。

以上を踏まえると、保険代理店業界に起こってくることは「陣取り合戦が激しくなり、優勝劣敗が進む」ということです。限られたマーケットの取り合いになりますから、一度お客様になった方を継続的にお客様として維持し続けられるかが問われてくることになります。

保険代理店は顧客本位の組織営業を実現し、データを活用して勝ち残る

このような環境変化の中で勝ち残っていくためには、顧客本位の組織営業を実現することで、データをフル活用していくことが重要です。

AIはデータを活用できるから人が太刀打ちできないほど強くなると上述しましたが、データを活用することはAIだけの専売特許ではありません。人もデータ活用で進化できます。

データ活用を進めるためには、保険代理店が経営として顧客本位の組織営業を目指していく必要があります。

まず真に顧客本位の営業活動を行うために、全てのデータを顧客に紐付けて管理すべきです。顧客に紐づけて管理すべきなのは、世帯情報・契約情報・商談メモ・意向把握実施記録・提案書・更改案内などあらゆるデータです。顧客を多角的に分析することが可能になり、顧客にとって最善の提案やアフターフォローができます。

また、顧客対応を募集人の個々人の自己責任にしてしまうと、顧客のデータも募集人個人の記憶や手帳の記録にとどまってしまいます。会社として、組織で顧客対応していくというスタンスを明確にしてこそ、顧客データをシステムに記録して全社で管理する必然性が生まれます。

顧客の感情に寄り添い、思いやりを持って接することはAIにはできません。顧客本位の組織営業で人にしかできない価値を生み出していきたいですね。